新建材のフローリング材は、-枚が幅100叩なのですが、実際は3枚分がつながり、約300mlセットで施工できるものがよく使われます。一方で無垢材は一枚幅約100阻。新建材のように工業製品ではないので3枚セットにはできません。施工時には、調湿による伸縮を考慮した隙聞を確保する手間も必要で、新建材の床張り施工と比較すると約1・3倍工期が長くなります。紙クロスは施工前に、たたんで仮置きするだけで織りしわがつくデリケートな素材で、その扱いにくさから、ビニールクロスに比べて約1・5倍は工期が長くなります。また、珪藻土は乾燥した素材に水を混ぜる行程があり、容器を持って現場と水道を何往復もする必要があります。さらに乾くまでの時聞がそのまま工期に加算されます。その結果、ビニールクロスに比べて約2倍も工期が長くなります。「自然素材の特性で長くなる工期をできる限り短縮しなければ、職人さんや現場管理者の人件費や労務管理費で工事費全体が高くなります。よって手戻りをなくすため、職人さんの技量に頼る仕上げレベルを均一にする努力をします。はじめての左官屋さんにはプレハブのモデルルームで訓練をします。その道初年のとわもての職人さんに対して『もう1回やり直してください』とダメだしするのは、かなり勇気のいることですが」(小竹)自然素材の採用は、施工現場を占有してしまう問題もあります。最近の一般的なマンションの内装は、工期短縮や施工精度向上のために、収納棚などを既製品の家具とし、工場で製作するものを採用します。その結果、コストダウンや品質の均質化が図られ、現場は取付けのみ行います。それにより施工時聞は短く、常時稼動する現場をつくれています。一方で、一つ一つの作業時間が手作業のため長く、特定の作業で現場を一定時間占有する場合が多く、はっきり言って作業効率は良く・ないです。たとえば床張りの作業時は、無垢材が傷つかないように工事種目の異なる職人の同時作業は避けます。珪藻土や水性塗料などの湿式の建材はホコリの付着を防ぐため乾くまでは入室させません。少しでも締麗な仕上げで・お客様へお引渡しするために、とこはひたすら我慢して待つのです。その結果、現場内での作業を順番待ちする状況となり、必然的に工程管理が複雑化し、工期が長くなるのです。家 査定するなら今すぐコチラ。

工場で大量生産する新建材と違い、自然素材の建材は、2っとして閉じものがありません。同じ商品でも1m単位で寸法が違っていたり、調湿性能に差があったりします。代表的念事例であげるなら無垢材のフローリングでしょう。木材内部に含まれる水分の割合を含水率といいます。木材は含水率が多いほど反りや割れなどの変形が発生します。そのため伐採後すぐに使用するととはなく、天日による自然乾燥や木材用乾燥機を通した後に出荷されます。しかし、出荷時に含水率四%以下であっても、工事現場に到着した時点で同じ値とは限りません。運搬中の湿気の影響などで実際には8%から却%程度に変化する場合があります。また、フローリングは両端で含水率が異なるとともあります。ですから実際に納品されたものを確認すると、100本中5本程度は使い物になりません。大きくS字に歪んだものもあり、とれはもう返品するしかありません。では、発注する際の数量はどの程度になるのか。事業企画部の樋口はとう話します。「その発注案件では、ゼネコンが無垢材のメーカーとの取引を断ったため、弊社からの支給品となりました。弊社で床材を買い取り、それをゼネコンへ渡し、施工して頂く仕組みです。不具合のある材料が混じり、施工時には『余り材』も出るため、多めに発注しなければならなりません。どの程度多めに発注するかゼネコン勤務経験のある社員にヒアリングして決めました。しかし、実際はそれ以上はねられ、追加発注が必要でした」建設業界では、使えない建材を現場で選り分けることを「はねる」といいます。現場に納入されたフローリングも、その時点で変形していたり、反りや割れが生じていたりするものはもちろん、反りそう、割れそう、と近く不具合の発生が予測される建材もはねるのです。「はねる作業は、私たちデベロッパーより、職人の方がより多く、厳しく行いがちです。はぷしねも〈お客様からのクレームで張り直しするのは職人自身だからです。葉節・根杢といわれる木の豊かな表情と見て取れる部分すら、危険回避ではねてしまいます。新建材とは比べられないほど歩留まりが悪かった。

もっとも手離れが悪かったのは無垢積層フローリングです。とれは表面が3阻の無垢材と、その下地となるロ皿の積層材を工場で貼り合わせたものです。無垢材に近い調湿効果が期待でき、さらに無垢の1枚板と比較して、積層材による形状安定性もある優れモノのはずでした。マンション完成当初は無垢に近い風合いと心地よい肌触りが感じられるものでした。しかし入居開始から数か月後、お客様から「フローリングが割れるのですが」という問い合わせが入りました。「とにかく見に行きます」とお答えし、すぐにお客様のお宅に・お伺いしたのですが、私
たちは博然としました。「積層材の下地にしっかり接着されているはずの無垢材が剥がれて浮き、割れたりしていました。それも1、2カ所ではなく数カ所もありました。普通に歩くだけで引っかかるほどです」その場で張り替えの約束をし、さっそく施工業者やメーカーと張り替え工事の検討を開始しました。床の剥がれや浮きの原因は、表面3阻の無垢材と下地の積層材の接着強度にばらつきがあったととによるものです。問い合わせの件数はまだ少なかったのですが、私たちは同じ床材を使用した100世帯近くのお客様すべてにアンケート調査を実施させて頂きました。やはり、程度の差はありますが先日見たお部屋と同様の現象が数十戸のお宅で確認でき、私たちはお客様の要望を聞いて対応するととにしました。「工事は1住一戸あたり約1週間。お客様には家具を移動して頂いたほか、工事の騒音などで大変な迷惑をかけました。引渡し後の数カ月で、ご購入頂いた・お客様の無垢の床を次々に工具で剥がしていくのです。しかも工事期間中は仮住まいして頂いた方もいます。あの時のお客様に対する申し訳なさと、やるせなさは今でもはっきり覚えています」張り替え工事費、お客様の引っ越し費用、仮住まいの費用などは、
行ったゼネコン負担ですが、商品を指定した側にも責任があります。結果的に私たちの会社は数千万円の高い授業料を支払う乙とになったのです。

自然素材は大量生産できる新建材に比べると、どうしても高額です。それに加え、調達や手間といった自に見えない部分にもコストがかかります。マンションの内装に使われる建材の仕様の基準はデベロッパーが決めるものの、メーカーや品番は、ゼネコンが選定してきた数種類の建ら選ぶメーカーフリl方式とし、ゼネコン推奨品をデベロッパーが承認するというのが一般的です。不具合等があっても最終責任はゼネコンにとってもらいたいデベロッパ!と、調達コストを少しでも抑えたいゼネコン側の利がとζ で重・なるためです。しかし「エコヴィレッジ朝震台」はメーカー・品番までも弊社から指定しました。自然素材は仕様基準だけでは程度の差が大きく、同じ「無垢の扉」でもメーカーによって品質が大きく異なります。そのため、メーカーまで指定しないととには安心できないのです。通常は「メーカーフリl」の方が、競争原理が働くため希望するレベルの資材を安く入手できます。しかし自然素材は同じ性能のものが数多く流通しているわけでは・ないので、やむなく「メーカー指定」となります。必然、メーカー主導の金額となりがちで価格交渉に苦労することになります。また張り手間や塗り手間といった作業手間も、新建材に比べると一手間も二手間も必要となり、時聞がかかります。その作業も自然素材の施工に慣れた職人を確保しなければな
らず、人材確保にも苦労します。もとより、たくさんの人数で行えぼ、責任の所在があいまいになるζ とに伴う品質の低下・施工精度の悪さも避けられません。職人の習熟度によって精度に違いも出るので、できるだけ少数の慣れた方に日数をかけて施工していただいているのが実情です。エコヴィレッジシリーズは屋上緑化や、ワイドスパン、設置窓数の多さなど、もとより高コスト体質なのですが、さらなるコストアップとなるのです。「季節によって無垢フローリングの張り方を変えたり、熟練した職人さんを独占したりする上に、材料費や手間代で新建材を使用するより、一戸あたり100万円以上は高くなるんですから」と、建築技術部の小竹は話します。それでも採用を継続するのは、自然素材で居住者が得る快適性や安心感は、単に費用対効果では測れない価値があると考えているからです。

エコミックスデザイン第2弾「エコヴィレッジ朝震台」が完成しました。ちなみに、との物件以降、私たちの企画するマンションのブランド名は「エコヴイレツジ」になります。との物件では無垢の積層フローリング床、い草よりも防菌・防カピ効果の高い天然和紙畳、珪藻土入り石膏ボ1ド、無垢の扉、無垢材の腰壁、リノリウムの床、珪藻土クロス、ウ1ルカーペット、押し入れ内のすのとなどの自然素材を標準装備としました。当初、壁には調湿効果や空気清浄効果の高いシラス壁「薩摩中霧島壁」を採用していました。しかし、ある朝、営業社員がモデルルームに出勤して気づきます。昨日まで自慢していた薩摩中霧島壁が割れているのです。設計担当を呼び出し、調査させると、下地に貼っているボlドの継ぎ目部分がひび割れてしまうととが判明したのです。営業社員は「だからζんなのやめておけぼよかったのに。どうするの? 販売までに直せるの?」と、昨固まで自慢していたのに怒っています。とのやり取りは、新建材主流の新築マンションを、自然素材に転換する過程では日常的に見る光景です。僅かなひびなら覚悟していましたが、大きな割れを現実に見せ付けられ、残念ながら「薩摩中霧島壁」はオプションとし、調湿繊維壁紙を標準仕様とせざるをえませんでした。自然素材を使う難しさについて痛感したのは壁だけではありません。引渡し前の検査で
クロlゼットを確認すると、一部の桐製建具が反っていました。直らないものに関しては交換です。ζ のように自然素材で内装する新築マンションづくりに挑戦し始めた噴は、新建材にはないさまざまな問題に直面しました。そしてなぜ新築マンションに自然素材が使われないのか、その理由がだんだんわかってきたのです。

そとで鈴木は大きく舵を切ります。「室内環境まで踏み込み、体感温度を軸に据えよう」社長からの力強い決意表明だったものの、営業部の社員たちは首を縦に振りませんでした。彼らの主張はとうです。「体感温度の説明って、マンション業界でそんなこと語れる人なんでいませんよ」「マンションは3Pで勝負なんです。自然の力で涼しくって言っても、本当に涼しく念るんですか?3P以外の価値軸・なんて、カツコいいけど無理です」「それって原価は上がるんですか?建築原価が上がるなら、販売価格も上がりますよね。それじゃ売れません」営業部が本質的に持っていた「不動産は3Pスで売れる」という不動産業界の常識から脱却できなかったのです。(プレイス、プラン、プライス) のパ-フン彼らは他社の先行事例がなく、漠然とした不安や戸惑いを感じていました。「今まで知ら・なかった体感温度の理論を学んだとはいえ、それを商品説明ツ1ルでわかりやすくプレゼンするっていっても・お客様は理解してくれないと思う。僕らだってよくわからないんだから」こうした彼らの感情は販売開始後も継続的に心を揺さぶり、不安にさせていました。彼らがいうように体感温度の快適さの追求に軸足を置けぽ、建築原価は高くなります。そして正直に言えぼ、商品企画の段階でもニlズがあるかはわかりませんでした。鈴木は大きく舵を切るために、リプランの中期経営計画に「体感温度へのイノベーション」をキーワードとして掲げ、過去のライトコlト設計(玄関前の吹き抜け空間)の一例を引き合いに出しました。「今までも北側に配置されるライトコlトは涼しい空気をつくり出していた。そとに面する玄関の小窓から、との冷気を室内に取り入れて活用する」と社員に事あるたびに話すようになりました。社内では主に夏場の体感温度を下げるアイデアを出し合うようになり、従来のマンションにはない建築の工夫、その効果的な暮らし方が具体的に提案されるように念りました。以前より行っていた豊富念植栽は、新しく導入された屋上緑化や壁面緑化とともに夏場の体感温度を下げるよう意味付けされ、その効果的念配置を練り直しました。また、日射遮蔽や夜間換気によるコンクリートの蓄冷で室内を冷やす工夫など、体感温度をコントロールする設計手法を「エコミックスデザイン」と命名し、暮らし方とセットでマンション事業を具体化していったのです。エコミックスデザイン第一号は2002年完成の「ザ・ステイツ平和台」でした。ライトコlト側の小窓だけでなく、バルコニーの日射遮蔽には蒸散作用も期待し、朝顔やゴlャーなどの一年草でつくる「緑のカーテン」を設置可能とするため、庇にフックを取り付け、プランタl置き場や緑化ネットを設置しました。また、建物全体が緑で包まれるように屋上・および壁面の緑化を行い、共用階段にはアイピーなどのツル性植物で、涼しい緑陰をつくり出します。さらにマンション北側には常緑樹と水路を配置。機械式駐車場の輯射熱を緩和すると同時に、その蒸散作用は天然の涼しい空気をつくり出します。との冷気を各戸に設けた小窓を通し室内に取り込む設計を施したのです。緑のカーテンは入居者に育ててもらうととになります。つまりエコミックスデザインの設備や設計配慮はデベロッパlが行いますが、実際にそれを活かすのは入居者です。その理解がなければ価値は維持できません。私たちの会社は環境共生型マンションの農園の教訓で痛いほどわかっていたのです。そとで入居前と入居後の計4固にわたって、暑さと涼しさの仕組みを学び、緑のカーテンを含むエコミックスデザイン効果を検証するマンション内の勉強会を開催しました。モニターのお宅を測定し、そのデータを入居者へ公開するととで、2年目以降には緑のカーテンを育て涼しく暮らすご家庭が増えるのを目の当たりにし、コミュニティの力を借りる手法の必要性を学んだのだと思います。やはりデベロッパーは「必要と思われる設備は用意しました。あとはど自由にお使いくださいませ」ではダメなのです。入居者同士がお互い緑のカーテンの様子を見せ合い「どうしてとん・なに上手に育てられるの?」、「なんでお宅はエアコンなしでもこんなに涼しいの?」という会話が日常的に聞ζえるようになったと聞きます。こうして「ザ・ステイツ平和台」という、私たちが試行錯誤を繰り返していたエコミックスデザインが新たな第一歩を踏み出したのです。

その後さまざま念検証を重ねていくととで、いくら周辺の環境が良くなっても、ションの室内空間そのものが快適でなければ満足できるはずがない、という当たり前のζ-vンとに気づいていきます。「環境と共生する力で、室内を快適にする新築マンションはつくれないだろうか」そのことを目指す一環として、私たちの会社が視察先に選んだのはドイツでした。そζで「パウピオロギl」(建築生物学)という言葉と出合いました。人間と自然に適合した理性ある建築という意味です。その第一人者で建築家のヨアヒム・エプレ氏を訪ねたのが転機となります。同氏の言葉は今でも忘れません。「日本の環境共生住宅の事例は、ドイツでなく日本にある。日本人はきびしい暑さと湿度のなかで快適に暮らす術を昔から持っていた。しかし、自らそれを捨ててしまった。だからドイツに来るのではなく、日本の住宅を学べ」環境共生の先進国として学ぶととろは多かったものの、ドイツは北海道よりも北に位置し、東京近郊の生活環境に単純に置き換えられるものではありません。そζ で帰国後、私
たちは日本の伝統的な建築の研究を始めるのです。たとえば京都の町家。ζ の建物は間口が狭く、奥行きが深いつくりが特徴です。「うなぎの寝床」と呼ばれる敷地形状は、間口が広いほど税金が高くなる京都独特の「間口税」が課せられていたからといわれています。京都は盆地のため夏は湿度が高く、蒸し暑いのは有名です。その厳しい環境でも涼しく快適に暮らすための建築の工夫には、目を見張るものがあります。税金のおかげで細長くなった敷地は、聞取りゃ通風の計画、庭の配置などの設計が正方形の敷地と比べて自由度は低いと思います。しかし、町屋は次のような上手な設計を施しています。基本的な構成は、表通りから「底←坪庭←居間←裏庭←蔵」の順になっています。表の庖舗から裏の庭まほぼ直線的な「続き間」にすることで、風がよく通ります。ふすますだれすどまた、玄関の戸を格子戸にし、夏には襖や障子を取り払い、簾や戸に替えるのも、視線を遮りながら緩やかに風を抜く技です。ひさしそして、庇を低くし陽射しを遮り、玄関の前や通り庭に打ち水をするなど、吉田兼好の徒然草第五十五段に記された「家のつくりゃうは、夏を旨とすべし」の言葉の通り、夏の暑さをやわらげる工夫、が・なされていました。乙れらにより、気温が下がらなくともヒトの体感温度を下げ、程よく涼を感じる空聞がつくり出されます。町家が涼しくなる秘密は「坪庭」や「裏庭」にもありました。庭に植えられた樹木は、枝葉を伸ぼすと真上からの強い陽射しを遮ると同時に、土中の水分を吸い上げ、それを葉から蒸散する。気化熱の原理で周囲の空気を冷やすのです。そしてまた夜間には放射冷却により庭が冷やされ床下にまで冷気が溜まるのです。坪庭は、室内に風のゆらぎをつくる役目も果たしています。表通りに陽が射し熱っせられると上昇気流が発生し、裏庭や坪庭の冷たい空気が部屋を通り表通りへと移動していきます。これが風のゆら、ぎです。町家建築は、当時の日本では有数の大都市であった京都で生まれたものです。その夏を涼しく過ごす工夫は現代のマンションにも十分応用できるものでした。また沖縄の古民家は台風から家屋を守るため屋根を大きく低く設計し、日陰を広く生み出します。ζ れは居室前の地面を熱くしない配慮につながります。そして、「続き間」という部屋が連続する構造も特徴のひとつ。建物の四方に開口部を設けられているので、必要に応じて涼しい風が部屋の中を縦横無尽に吹き抜けるようになっていたのです。古来の日本の住まいに関する知識を深めることで、お客様の「周辺の環境はいいよね」という一一百葉が、「周辺環境はよいのだけれども、部屋の中までその快適さは来てないよ」という意味だったのか、と気づかされたのです。との気づきが、マンションに住まう人へ、自然の力を使って快適さをつくる方向へと大きく踏み出すきっかけとなったのです。

新建材を見直す機運が社内に芽生えはじめた1997年、国土交通省(当時の建設省)が、環境共生住宅推進協議会を発足させました。これは「地球環境の保全、周辺環境との親和性、居住環境の健康・快適性を目指そう」といった趣旨の協議会です。人と自然環境が調和する環境共生型住宅で快適な暮らしをつくりたい、と思つてはいたものの情報不足に苦しむ当時の私たちは、事業化を前提とした勉強をはじめました。環境共生型住宅第一号マンションが完成したのは1998年。「今まであった樹木をできるだけ残す」、「工事のために抜く樹木は竣工後に移植する、または戻す」といった環境配慮を行います。屋上緑化や共有部分に区割りした農園を設置。提携した近所の農家の方を講師として迎え入れ、農業初体験の方でも野菜をつくれる企画としました。かままた、木陰をつくる東屋や料理を楽しむ竃をつくり、家族同士で集まり収穫物を食べ・な
がら、コミュニティが育まれる計画としました。さらに、雨水を活用する仕掛けも施し、入居者の環境意識を高めるととにも注力しました。
しかし、気が付くと数年で参加者は減っていきました。次の環境共生型マンションは、日本野鳥の会から「エコガーデン」の認定を受けるほど、緑豊かな森の中に建つ設計を施しました。前回の失敗を踏まえ、木々の聞を抜ける爽やかな風や木陰が織りなす空間構成を共用部分に設るζとで、その気持ち良さが永続的に共用部分を活用する仕掛けになるのではないかと、期待を込めたのです。開発前の現地は森のような場所で、竣工後には既存樹木の約的%が残る計画としました。バルコニーから高さ却m超の既存樹木を眺めるととができ、敷地内には自然探索路と日本野鳥の会が認定する立ち入り禁止のエリアを設けて永続的な環境保全を、森の中に建つマンションでつくり上げたのです。業界団体からは最優秀プロジェクト賞を受賞し、マスコミからも大変多くの取材を受けて高い評価を頂きました。しかしながら、入居されたお客様からは「周辺環境はいいよね」程度の評価で、私たちが期待した言葉は頂けませんでした。森の気持ちよさや楽しさを暮らしに感じてほしいと熱心につくり、販売も好調だったのに、なぜお客様はその良さを理解してくれないのか:::。

1995年噴、住宅業界に激震が走りました。「シックハウス症候群」が雑誌やテレピなどで盛んに取り上げられ、住宅における室内空気の汚染問題がクローズアップされました。汚染の原因となったのが揮発性のホルムアルデヒドなどの有害物質。今でも工業製品である新建材は、ホルマリンを原材料とした接着剤を多用するため、当たり前に含まれています。「ホルムアルデヒドを含む新建材に固まれた住宅をζ のままにしていいのか」疑問を感じました。通常、マンションを選ぶ判断基準は「駅からの距離(プレイス)」、「広さ(。フラン)」、「価格(プライス)」の3要素(3p)といわれています。よってデベロッパーはこの3大要素を軸に商品企画を行い、そのほかの要素となる内装材は、できるだけ安く、当面のクレームには心配がなく、見栄えがよい製品で、新築マンションという狭い範囲で普通に使われている素材を選びます。マンションはかなり高価な買い物です。建築物としての安全性や耐久性などは当然に求められます。しかし、残念ながら、業界全体の風潮としては住宅内部の安全や安心をつくるととにいまだ関心は薄いようです。風通しが悪く湿気でジメジメし、新建材から化学的な異臭がするようでは、不快なだけでなく健康にも悪影響があります。昼夜間わずエアコンをかけ続けなければなら・ない住まいが健康にいいはずはないのです。親が我が子に健康に育って欲しいとする願いは当然で、人にとって健康は大切なものです。ナイチンゲールが言うように生活の中心となる住まいが原因で病気になってしまっては、医療費がかかるという話だけでは片づけられる問題ではないのです。ζ の当時の鈴木の言葉は、いまエコヴィレッジで自然素材を使い、住宅内部の安全や安心を求めるととが、建築物の安全性や耐久性を求めるのと同等に重要なのだ、という確信に変わる契機となったのです。

「自然素材で内装する快適な住まいを提供したい」夏場にサラッと踏み締める無垢材の床の気持ちよさ、職人の手わざで仕上げた珪藻土の
壁が室内の湿気を吸湿し、爽やかな空気の肌触りを感じて過ごす。そんな感覚が普通に味わえる暮らしをマンションでもど提供していきたいという思いを抱き・ながら、「エコヴィレッジ」という分譲マンションの設計を行ってきました。さかのぼること約日年、エコヴイレッジの原型は自然素材のオプション採用からスタートし、自然素材の特徴が生きる加工資材を採用してきました。その過程で念願だった自然素材そのものを内装に採用する技術や勘が備わり、現在のエコヴィレッジでは、無垢材のフローリングを床に張り、壁は珪藻土を塗り仕上げることができるようになりました。今では1800戸以上のエコヴイレッジをど提供させて頂くまでになっています。自然素材は傷や汚れがつきやすく、一般の方から見れぽ、引渡し時の仕上がりレベルは新建材のマンションと比べると見劣りするかもしれません。しかし自然素材の内装は、光りの反射の仕方も新建材のキラキラ感とは異・なり、しっとりした感じを演出します。もちろん空間の落ち着きとは別に、夏の過剰な湿度を抑えるとともに、冬の乾燥や結露が少なくなるなど、快適な室内環境を提供するために必要不可欠な素材ですが、これまでのエコヴィレッジを様々振り返ると、そのことを確信するととができます。自然素材の内装は、意識の高い方の中では戸建ての注文住宅やリノベlションと呼ばれる中古マンションのフルリフォームなどでは当たり前になりつつあります。無垢材のフローリングや珪藻土の壁など、今や珍しくありません。一方、新築マンションでは、いまだにビニールクロスや合板のフローリングといった工業製品である「新建材」が使われています。自然素材と比べると傷や汚れに強く、一定期聞は美しさを保てるといわれています。新建材は1960年代後半におけるマンションの建築ラッシュの噴から使われるようになりました。私たちの会社でも、かつては新建材を使っていました。しかし、却年前の出来事をきっかけに、新建材で内装するととに疑問を抱き、自然素材に着目するようになったのです。